不動産投資の収益を「表面利回り8%!」と広告に書いてあるのを見て購入し、蓋を開けてみたら手取りが全然違う——そんな失敗を防ぐために必要なのが、税金を織り込んだ「税引後キャッシュフロー」の計算です。
この記事では、表面利回りから始まり、実質利回り、そして税引後の実際の手取り額まで、ステップごとに計算方法を解説します。
Contents
収益計算の4つのステップ
不動産投資の収益計算は、次の4段階で考えるのが最も正確です。
- 表面利回り: 年間家賃収入 ÷ 物件価格
- 実質利回り(NOI利回り): (年間家賃収入 − 運営費用)÷ 物件価格
- 税引前キャッシュフロー(BTCF): 実質利回り額 − ローン返済額
- 税引後キャッシュフロー(ATCF): BTCF − 不動産所得税額 + 税金還付額
多くの投資家が「表面利回り」や「実質利回り」で判断を止めてしまいますが、税金の影響を無視すると手取り額を大きく過大評価してしまいます。
STEP 1:表面利回りの計算
表面利回りは最もシンプルな収益指標です。
| 項目 | 数値(例) |
|---|---|
| 物件価格 | 5,000万円 |
| 年間家賃収入(満室想定) | 400万円 |
| 表面利回り | 400万 ÷ 5,000万 = 8.0% |
ただし表面利回りは、管理費・修繕費・空室損失・ローン金利・税金を一切考慮していません。広告の利回りは必ず表面利回りと理解してください。
表面利回りの落とし穴については、表面利回りの罠【2026年版】で詳しく解説しています。
STEP 2:実質利回りの計算
実質利回りは運営コストを差し引いた収益率です。
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| 項目 | 年間金額(例) |
|---|---|
| 年間家賃収入(空室率5%考慮) | 380万円 |
| 管理費(家賃の5%) | △19万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | △15万円 |
| 修繕積立金・修繕費 | △20万円 |
| 火災保険料 | △3万円 |
| その他(入居費用・雑費等) | △5万円 |
| NOI(純営業収益) | 318万円 |
| 実質利回り | 318万 ÷ 5,000万 = 6.36% |
表面8.0%→実質6.36%と、約1.6%ポイントの差が生じます。実質利回りの詳細計算は実質利回りの計算方法【2026年版】で確認できます。
STEP 3:税引前キャッシュフロー(BTCF)の計算
ローン返済額を差し引いた、実際の手取りに近い数字がBTCF(Before Tax Cash Flow)です。
| 項目 | 年間金額(例) |
|---|---|
| NOI(純営業収益) | 318万円 |
| ローン年間返済額(元利合計) | △200万円 |
| BTCF(税引前CF) | 118万円 |
ローン条件(5,000万円のうち4,000万円借入・金利1.8%・35年)を仮定すると、年間返済は約200万円前後になります。この時点で手取り118万円=BTCFが年率2.36%まで下がります。
STEP 4:税引後キャッシュフロー(ATCF)の計算
ATCFの計算が最も複雑です。不動産所得税の計算には「税務上の収益計算」が別途必要になります。
税務上の不動産所得の計算
| 項目 | 年間金額(例) | 備考 |
|---|---|---|
| 年間家賃収入(空室率考慮) | 380万円 | — |
| 管理費・維持費等 | △62万円 | — |
| ローン利息部分 | △65万円 | 元本返済は経費にならない |
| 減価償却費(建物3,000万円÷22年) | △136万円 | 木造22年定額法 |
| 課税不動産所得 | 117万円 | — |
ポイントは「ローンの元本返済は経費にならないが、減価償却費は現金支出なしで経費計上できる」点です。これが不動産投資の節税の仕組みです。
税額の計算
| 前提 | 数値 |
|---|---|
| 給与所得(本業) | 700万円 |
| 不動産所得 | 117万円 |
| 合算課税所得 | 817万円 |
| 不動産所得部分への限界税率 | 約33%(所得税23%+住民税10%) |
| 不動産所得に係る税額 | 約39万円 |
ATCF(税引後CF)の計算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| BTCF(税引前CF) | 118万円 |
| △ 所得税・住民税(不動産分) | △39万円 |
| ATCF(税引後CF) | 79万円/年 |
| ATCF利回り(投資額5,000万円対比) | 1.58% |
表面利回り8.0%で始まった計算が、最終的な税引後キャッシュフロー利回りは約1.58%になります。これが「不動産投資の本当の手取り」に近い数字です。
税金メリットで「ATCF」が改善するケース
節税効果が最大化されるのは、不動産所得がマイナス(損失)になり給与所得と損益通算できる場合です。
| シナリオ | 課税所得 | 節税効果 |
|---|---|---|
| 給与700万円、不動産所得 +117万円 | 817万円 | 税額増加(△39万円) |
| 給与700万円、不動産所得 −100万円(損失通算) | 600万円 | 税額軽減(+約33万円還付相当) |
不動産所得がマイナスになるのは主に減価償却費が大きく利息も多い投資初期のケースです。築古中古物件(特に木造)や高額借入で購入した場合に起こりやすく、給与所得の税金が還付・減額される効果が生まれます。
サラリーマンの節税戦略については年収700万円以上のサラリーマンが不動産投資で節税する方法が参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. ローンの元本返済はなぜ経費にならない?
元本返済は「借りたお金を返す」行為であり、費用ではなく資産(負債の減少)とみなされます。利息部分だけが「借入金利子」として経費計上できます。これがキャッシュフロー(実際の現金)と税務上の所得が乖離する主な理由です。
Q2. 減価償却費が終わったらどうなる?
減価償却が終わると年間の経費計上額が大きく減り、課税不動産所得が増加します。税負担が急増するため、耐用年数到来前に売却する・次の物件を取得して減価償却を継続する・法人化して税率を下げるなどの対策が必要です。
Q3. 不動産所得の損失はいつまでも繰り越せる?
不動産所得の損失(赤字)は原則として給与所得と損益通算できます。ただし、土地購入のための借入金利子は通算できません(建物分のみ)。また損益通算後も残った損失は、翌年以降3年間の繰越控除が可能です(青色申告の場合)。
Q4. 青色申告の特別控除はどう影響する?
不動産所得に対して青色申告を行い、複式簿記・e-Tax申告を満たすと年間65万円の特別控除が受けられます。5棟10室未満の規模でも適用できるため、積極的に活用しましょう。この65万円控除は課税所得を直接減らすため、税率33%なら約21万円の節税効果になります。
まとめ
税引後キャッシュフローで収益を考えるポイントをまとめます。
- 表面利回り→実質利回り→BTCF→ATCFの4段階で判断する
- ローン元本は経費にならないが、減価償却費はキャッシュアウトなしで経費計上できる
- 不動産所得がマイナスになれば給与所得と損益通算でき、税金還付が生じる
- 減価償却終了後の税負担増加を見越した出口戦略が不可欠
- 青色申告65万円控除は必ず活用する
収益計算の基礎として実質利回りの計算方法と、法人化の損益分岐については不動産投資の法人化はいつすべき?もあわせてご確認ください。
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東京不動産投資ラボ編集部
東京都心の区分マンション投資を専門に情報発信。再開発エリアの最新動向と資産性分析を中心に執筆。