「どこの銀行が不動産投資ローンを貸してくれるのか」——この問いは、投資家が物件購入を検討する際に必ず突き当たる壁です。
2026年現在、日銀の利上げによって住宅ローン金利は上昇傾向にあります。「銀行の審査が厳しくなった」「投資用ローンが通らない」という声も聞かれます。
しかし、2026年3月期(2025年度)の銀行決算データを一次資料で検証すると、まったく異なる事実が浮かび上がります。不動産業向け融資残高を1年で+51.6%増やした銀行、2年間で残高を2倍以上に拡大した銀行——積極的に貸している銀行が確実に存在するのです。
本記事では、各銀行のIR資料・決算短信・決算説明資料から抽出した定量データをもとに、不動産投資家が知るべき2026年の融資動向を徹底解説します。
Contents
なぜ「金利上昇期」に不動産融資が増えているのか
まず、多くの投資家が抱く疑問を解消しましょう。「金利が上がったら融資が厳しくなるはずでは?」——この直感は、実は銀行ビジネスの構造を理解していないことから来ています。
利ざや拡大のメカニズム
銀行の主要な収益源は「預金金利と貸出金利の差(利ざや)」です。日銀の利上げによって、銀行が融資から得る利息収入は増加します。一方、預金金利の上昇は貸出金利の上昇より遅れる傾向があるため、短期的には利ざやが拡大し、銀行の収益性が改善します。
実際、2026年3月期の主要地銀では:
- 横浜フィナンシャルグループ:コア業務純益+30%増(過去最高)
- ふくおかフィナンシャルグループ:経常利益1,206億円(+16.4%増)
- スルガ銀行:当期純利益+72%増の340億円
銀行の収益が改善すれば、融資余力も高まります。金利上昇期は「融資が厳しくなる」のではなく、「有望な融資案件には積極的になれる」環境でもあるのです。
審査が「厳格化」した銀行と「積極化」した銀行の二極化
重要なのは、すべての銀行が同じ方向に動いているわけではないという点です。2026年の融資環境は明確に二極化しています。
| タイプ | 代表行 | 動向 |
|---|---|---|
| 積極融資行 | スルガ銀行・オリックス銀行・横浜FG・ふくおかFG | 不動産向け融資を大幅拡大 |
| 慎重行 | 一部メガバンク・信用金庫 | 投資用ローンの審査条件を厳格化 |
「どこに相談しても断られた」という感覚は、慎重行だけに相談していた可能性があります。積極融資行に適切なルートでアプローチすれば、現在でも十分な融資を受けられる環境は整っています。
【詳細分析①】スルガ銀行:最大の変貌株 不動産業向け融資が1年で+51.6%増
2026年3月期の銀行決算で最も注目すべき存在がスルガ銀行(証券コード:8358)です。
シェアハウス問題から7年:数字が示す完全な転換
2018年、スルガ銀行はシェアハウス「かぼちゃの馬車」をめぐる不正融資問題で揺れました。審査書類の改ざん・虚偽申告への黙認・不適切な担保評価が発覚し、株価は最大で約92%下落。金融庁から業務改善命令を受け、経営陣が全員退陣する事態となりました。
あれから7年。2026年3月期の決算書には、かつてのスルガ銀行とは全く異なる数値が並んでいます。
2026年3月期 業種別貸出金の詳細(確定値)
| 項目 | 2026年3月末 | 2025年3月末 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 不動産業・物品賃貸業向け合計 | 5,991億円 | 3,952億円 | +51.6%増(+2,039億円) |
| うち法人向け投資用不動産ローン | 2,125億円 | 1,545億円 | +37.5%増 |
| うちストラクチャードファイナンス | 3,649億円 | 2,631億円 | +38.7%増 |
| うちコラボレーション・ローン等 | 2,459億円 | 1,756億円 | +40.0%増 |
| 個人向け投資用不動産ローン | 7,675億円 | 8,695億円 | △12.3%減 |
| 貸出金合計 | 2兆3,915億円 | 2兆1,838億円 | +9.5%増 |
数字から読み取れる戦略は明確です。問題の根源だった「個人向け投資用不動産ローン」を約1,000億円圧縮しながら、法人向け・ストラクチャードを合計で約3,000億円以上積み上げる——この同時進行こそがスルガ銀行のビジネスモデル転換の核心です。
不良債権の劇的改善:旧問題残高の処理がほぼ完了
スルガ銀行の個人投資用不動産ローンは、長期にわたって高い延滞率が問題視されてきました。それが2026年3月期で大幅に改善しています。
| 指標 | 2026年3月末 | 2025年3月末 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 個人投資用不動産ローン延滞率 | 5.93% | 10.38% | ▲4.45pt改善 |
| 開示債権比率(金融再生法ベース) | 6.29% | 8.56% | ▲2.27pt改善 |
| 組織的交渉先除く開示債権比率 | 3.86% | 5.02% | ▲1.16pt改善 |
| 貸倒引当金戻入益 | 81億円 | 38億円 | +43億円増加 |
延滞率が10%超から5.93%まで低下したことは、旧問題残高の整理が峠を越えたことを示しています。貸倒引当金の「戻入益」が81億円に達していること(引当金を積みすぎた分を取り崩して利益に計上している)も、リスクの実態改善を裏付けます。
財務成績:当期純利益が前期比+72%の急拡大
| 指標 | 2026年3月期 | 2025年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 経常収益 | 1,033億円 | 842億円 | +22.7%増 |
| 経常利益 | 345億円 | 256億円 | +34.4%増 |
| 当期純利益 | 340億円 | 198億円 | +71.7%増 |
| OHR(経費率) | 50.8% | 58.7% | ▲7.9pt改善 |
| 自己資本比率 | 10.84% | 10.51% | +0.33pt改善 |
OHR(業務粗利益に占める経費の割合)が50.8%というのは、地銀の中でも上位の効率水準です。かつて「コスト高・非効率」と批判されていた頃とは、経営の質が根本的に変わっています。
投資家への示唆:スルガ銀行は「法人向け」なら再び有力候補
個人向け投資用不動産ローンは縮小傾向にあり、かつてのような個人向け審査緩和は期待できません。しかし法人スキームでの不動産投資・ストラクチャードファイナンスを活用した案件では、スルガ銀行が改めて選択肢として浮上します。通常の地銀では対応が難しい複雑な案件に、積極的に取り組む銀行に変貌しています。
【詳細分析②】オリックス銀行:2年間で不動産業向け融資を+112.7%増に拡大
スルガ銀行と並んで、不動産融資で圧倒的な成長を見せているのがオリックス銀行です。
2年間の急成長:メガバンクが引いたシェアを奪取
| 時点 | 不動産業向け残高 | 全体に占める比率 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 2023年9月末 | 2,464億円 | 11.09% | ー |
| 2024年9月末 | 3,711億円 | 15.66% | +50.6%増 |
| 2025年9月末 | 5,239億円 | 19.90% | +41.2%増 |
| 2年間の累計増加 | +2,775億円(+112.7%増) | ||
2年間で残高がほぼ倍増です。これは市場全体の成長(+30%程度)を大幅に上回るシェア拡大戦略を示しています。
背景にあるのは、大手行・メガバンクが金融庁の方針に従って投資用不動産ローンの審査を厳格化する中、ノンバンク系のオリックス銀行がその空白を積極的に埋めているという構図です。
貸出金全体の状況と健全性
| 指標 | 2025年9月末(中間期) | 前年同期 |
|---|---|---|
| 貸出金合計 | 2兆6,337億円 | 約2兆3,700億円 |
| 個人向け(投資用不動産主体) | 2兆229億円 | 2兆72億円 |
| 不良債権比率 | 0.13% | 0.14% |
| 自己資本比率 | 11.5% | 11.2% |
| 経常収益(中間期) | 411億円 | 327億円(+25.7%) |
不良債権比率0.13%という数値は、メガバンク並みの超健全水準です。急拡大する不動産融資においても、質的な管理が高水準で維持されているといえます。
なお、2026年3月期通期の決算は2026年5月末時点で未発表のため、最新データは2025年9月末の中間期です。通期データが発表され次第、本記事は更新予定です。
投資家への示唆:個人向け投資用ローンで選択肢として有力
オリックス銀行は個人向けの投資用不動産ローンが主力商品です。都心のワンルームマンション・区分マンション投資に対して積極的で、年収500万円以上の会社員・公務員であれば審査対象になるケースが多いとされています。不動産投資会社経由での紹介ルートを活用すると、より有利な条件での融資相談が可能です。
【詳細分析③】横浜フィナンシャルグループ:3期連続最高益 コア業務純益+30%増
関東を地盤とする地銀最大手クラスの横浜フィナンシャルグループ(コンコルディア・フィナンシャルグループ、証券コード:7186)は、2026年3月期に3期連続で過去最高益を更新しました。
主要財務指標(2026年3月期)
| 指標 | 2026年3月期 | 2025年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 総貸出金 | 17兆6,674億円 | 16兆7,513億円 | +5.5%増(+9,161億円) |
| 国内貸出金 | 15兆3,071億円 | 14兆5,780億円 | +5.0%増 |
| 経常収益 | 4,907億円 | 3,993億円 | +22.9%増 |
| 経常利益 | 1,550億円 | 1,229億円 | +26.2%増 |
| 当期純利益 | 1,065億円 | 828億円 | +28.6%増 |
| コア業務純益 | 過去最高 | ー | +30%増 |
貸出金の増加は法人部門が牽引しており、不動産・金融保険業向けが主要な拡大セクターとなっています。神奈川・東京の不動産案件を得意とする横浜銀行の地域密着型融資は、関東エリアの投資家にとって重要な選択肢です。
横浜FGを使うべき投資家像
横浜FGは、神奈川・東京23区の物件を対象にした、安定的なキャリアを持つ個人投資家・中小法人に向いています。地域密着で担保評価に精通した担当者が多く、マンション1室から始める会社員投資家の相談にも乗りやすい文化があります。
【詳細分析④】ふくおかフィナンシャルグループ:貸出金が1年で1.3兆円増加
九州最大の地銀グループ、ふくおかフィナンシャルグループ(証券コード:8354)も2026年3月期に力強い成長を記録しています。
主要財務指標(2026年3月期)
| 指標 | 2026年3月期 | 2025年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 総貸出金(銀行合算) | 20兆3,837億円 | 19兆674億円 | +7.0%増(+1兆3,163億円) |
| うち法人部門 | 16兆208億円 | 14兆8,322億円 | +8.0%増 |
| うち個人部門(ローン等) | 4兆3,629億円 | 4兆2,352億円 | +2.9%増 |
| 経常収益(FFG連結) | 6,211億円 | 4,557億円 | +36.3%増 |
| 経常利益 | 1,206億円 | 1,036億円 | +16.4%増 |
| 当期純利益 | 854億円 | 721億円 | +18.4%増 |
| コア業務純益(銀行合算) | 1,649億円 | 1,360億円 | +21.2%増 |
法人部門が+8%増と個人を大きく上回る成長を見せており、不動産・建設業向けの法人融資が主要な拡大エンジンとなっています。
グループ傘下の福岡銀行・熊本銀行・十八親和銀行は、それぞれの地域で不動産業者・投資家向けの融資に積極的です。特に福岡市の不動産価格上昇が続く中、九州エリアの投資物件を検討する場合はふくおかFG系列行が第一候補になります。
4行の定量比較:投資家が選ぶべき銀行の判断基準
| 銀行 | 不動産向け残高 | 前期比 | 強みエリア | 向いている投資家 | 不良債権比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| スルガ銀行 | 5,991億円 | +51.6% | 全国対応 | 法人・ストラクチャード案件 | 6.29%(改善中) |
| オリックス銀行 | 5,239億円(中間期) | +41.2% | 都市圏 | 個人・区分マンション | 0.13%(最高水準) |
| 横浜FG | 詳細非公表 | 貸出全体+5.5% | 神奈川・東京 | 個人・中小法人 | 低水準 |
| ふくおかFG | 詳細非公表 | 法人部門+8.0% | 九州全域 | 法人・九州物件 | 低水準 |
選び方の3つの軸
軸①:個人 vs 法人
個人名義での投資用ローンを探すなら、オリックス銀行・横浜FGが選択肢に入ります。法人スキームを活用するなら、スルガ銀行のストラクチャードファイナンスや大手地銀の法人融資が視野に入ります。一般的に、年収800万円以上・純資産1,000万円以上の属性であれば法人化を検討する価値があります。
軸②:物件エリア
横浜FGは関東・首都圏、ふくおかFGは九州・福岡に強みを持ちます。物件の担保評価精度は地元行が有利なため、投資エリアを決めた後はそのエリアに地盤を持つ銀行から優先的にアプローチするのが合理的です。
軸③:投資会社経由のルートを活用する
個人が銀行に直接融資相談するより、複数金融機関と提携している不動産投資会社経由でアプローチする方が審査通過率は高まります。提携ローンの場合、通常よりも有利な金利・条件が提示されるケースも多いです。
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→ 関連記事:プロパティエージェントの強みと特徴を徹底解説【2026年版】
2026〜2027年の融資環境:今後どうなるか
日銀の追加利上げが焦点
日銀は2026年度も緩やかな利上げ路線を示唆しています。政策金利が0.75〜1.0%に向かうシナリオでは、銀行の利ざやはさらに拡大し、短期的には融資余力が高まり続ける可能性があります。
一方、金利1%超になると変動金利型のローンを組んでいる投資家のキャッシュフローが悪化します。これが不動産価格の調整圧力になった場合、銀行の担保評価が厳しくなり審査が通りにくくなるという連鎖が起きる可能性もあります。
今が「融資を確保しやすいウィンドウ」である理由
現時点(2026年前半)は、以下の条件がそろっています。
- 銀行の収益が改善し融資余力が高い(利ざや拡大局面)
- 不動産価格はまだ上昇トレンドを維持(担保評価が取れやすい)
- スルガ銀行・オリックス銀行など積極行が市場シェアを拡大中
金利がさらに上昇し、かつ不動産価格が軟化し始めると、この「融資しやすいウィンドウ」は閉じていきます。投資を検討している方は、今年〜来年前半が融資確保のタイミングとして重要な時期と認識しておくべきでしょう。
まとめ:データが示す2026年の融資環境の真実
2026年3月期の銀行決算データから得られる結論をまとめます。
- 融資環境は一律に厳しいのではなく、銀行ごとに二極化が進んでいる
- スルガ銀行は不動産業向け融資を1年で+51.6%増と急拡大中(法人・ストラクチャードが中心)
- オリックス銀行は2年間で不動産業向け残高を+112.7%増(個人投資家向け)
- 横浜FG・ふくおかFGは地域密着で力強い成長、コア業務純益は過去最高水準
- 今年〜来年前半が「融資確保のウィンドウ」として重要
融資先の選択は、物件選び以上に投資成果を左右する重要な意思決定です。「どこに相談すればいいかわからない」という方は、まず複数の金融機関と提携している不動産投資会社のセミナーで情報収集することをお勧めします。
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【データ出典】
本記事のデータは以下の一次資料に基づいています。
・スルガ銀行 2026年3月期 決算説明資料(2026年5月14日公表)
・オリックス銀行 2025年9月期 中間期決算説明資料(2025年11月公表)
・横浜フィナンシャルグループ 2026年3月期 決算短信(2026年5月公表)
・ふくおかフィナンシャルグループ 2026年3月期 決算説明資料(2026年5月13日公表)